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団内指揮者の酒井雅弘さんから、ある時こうした提案を切り出された。
「実は、アンコールでFesta di Credoをやろうという話があるんですが、どう思いますか?」
僕は即座に、
「ダメダメ、こちらだけ盛り上がってお客さんがシラけていたら目も当てられないからね」
と断った。
理由はふたつあった。ひとつは、酒井さんが提案した時点では、まだアカデミカ・コールのおじさま達はFesta di Credoのリズムに全然ついていけていなかったこと。だって仕方ないよな。宴会では、拍の頭で手拍子を取りながら演歌や民謡などを歌っている世代(失礼!)なんだから。この、アップビート&シンコーペーション続きのこの曲のリズムはきっと果てしないほど難しいに違いない。
ふたつめは、コンガなどを使って浮かれて書いたように感じられるミサ曲全体を、果たしてクリスチャン達がどのように受容するのだろうという不安があった。
それでも、最後のDona nobis Pacemでは、一応真面目な音楽で、しかも静かに瞑想的に終わるから、それまで否定的に捉えていた人も溜飲を下げて、最後がよかったから、この余韻に浸って帰ろうと思ってくれるのではないかと思っていたのだ。ところが、その後で、またサンバのFesta di Credoなんかやったら、「ま、いっか」と思っていたクリスチャン達の怒りが復活してくる可能性があるじゃないか。
というので、即座に却下した僕ではあったが、最後の週の練習に行って、僕は、
「あれ?」
と思ったのだ。酒井さんの忍耐強い薫陶の甲斐あって、おじさま達のノリが良くなってきたのだ。
こうなったら、むしろ程度問題かも知れない。つまり、中途半端はいけないけれど、本当にノリノリで出来たら、かえってもうひとつ清々しい効果で聴衆がこの会場を後に出来るかも知れない・・・と。
そんじゃ、いっちょやるか!Festa di Credoをアンコールで、となった。
それでFesta de Credoを演奏した。そしたら、酒井さんをはじめ、何人かのメンバーが、このサンバの曲を暗譜で歌っていたのは、驚き、そしてとても嬉しかった。それでますます調子に乗って、お客様に手拍子を促したら、会場中が一体感に包まれた気がした。
その時に思ったんだ。信仰にタブーなんてない。静かに瞑想的に祈るのも勿論必要だが、こうやって心を解放して、みんなでノリノリになるのだって信仰の力!祈りのパワー!
こうしてMissa pro Paceは、2019年8月11日、全世界に向けて発信された!
関わってくれた、全てのみなさん、ありがとう!
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