HIROFUMI MISAWA
Missa pro Pace
 夢のような街アッシジ
  
三澤洋史  
     本番で僕は、曲の合間にイタリア語のスピーチをしたので、指揮よりも、そっちの方が緊張した。でも、そのスピーチを聴衆が結構喜んでくれたようである。演奏が終わると、前の方に座ってくれていたお客さんは、スタンディングオベイションで答えてくれた。嬉しかった。

 本番中は、演奏に集中し、何も考えなかった・・・と言えば嘘になるな・・・でも、本番っていつも不思議な状態なんだ。いつもより感覚が鋭敏になっていて、とても細かいところまで分かる。
「あ、あいつ半拍ズレた」
とか、
「フルートもっと出さないとみんなに埋もれているじゃないの」
とか、
「バス、走るな!走るとぶっ殺すぞ!」
とか、耳も研ぎ澄まされていろんなことが分かる。
 それでいて、心は平安そのもので、それはそれ、これはこれで、この演奏会は絶対うまくいく、という確信に満ちている。僕がふたりいて、光につつまれている高次元の自分と、3次元世界に生きている自分が同時進行している、というのが一番近い感覚だ。

 そうして演奏会も終わりに近づいて来た。聖フランシスコを心から尊敬し、洗礼名にもしている僕が、アッシジ祝祭合唱団を日本で組織し、練習を積んで、アッシジの聖フランシスコ聖堂で、自分の作品だけで演奏会を開く。まるで夢のようなことが実現している。その感動が僕を包んだ。

 アンコールの Pater Noster(主の祈り)の最後の音が鳴り終わる時、
「ああ、終わってしまう!」
と最後の音を切るのを惜しむ気持ちが押し寄せた。


終演の瞬間
    Assisi 2024
「アッシジ祝祭合唱団 マエストロからのメッセージ」(2024.7.29 より)
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 演奏会当日のプログラム




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